シンガポールの食料自給率は、卵23%、葉物野菜7%、魚介類7%(2011年)という。こんなん絶対ウソじゃん、畑なんて見たこと無いぜ!とずっと思っていた。
ところがスーパーでたまに見かける「Product of Singapore」の野菜。もしかしてどっかに農業地帯があるのだろうか。
シンガポール島北西の農村地帯
というわけで調べてみるとLim Chu Kangと呼ばれる地域を中心に、シンガポールの東北部は農業が盛んであるらしい。おまけにこんな動画も見つかった。
植物工場。カッコイイ!!これこそ都市国家シンガポールにふさわしい農業のカタチに思える。ぜひ見てみたい。
そこで我々ネムラ取材班は現在でも農業が営まれているというシンガポールの奥地、Lim Chu Kangに潜入した。Uberでね。しかもWelcomeな感じで植物工場を見学できそうなファームが見つからなかったから、Lim Chu Kangから貯水池を挟んだSungei Tenagah地区を取材することに。
出だしからグダグダで申し訳ない。そこはネムラなんで許してほしい。
北海道みたいなところだった
33年も生きてきて、電線と電柱を見てこんなに興奮する日が来ようとは。
でも完膚なきまでに電柱が駆逐されている計画都市シンガポールで、こんな風景は初めてみた。
ちょっぴり道が狭いのがアレだけどぱっと見、北海道の農村地帯にも見えなくもなくなくない?
今回取材させていただいたのはKok Fah Technology Farmという農業法人様。週末は収穫したての野菜をモリモリ即売しているので、枯れ草みたいな状態で売られているスーパー野菜にうんざりしている人は買い物に行くだけでも満足できると思う。
もっと閑散としているのかと思ったら、クルマで一週間分の野菜を調達する家族連れでとても賑わっていた。野菜嫌いな人が多いイメージのシンガポールだけど、新鮮なシャキシャキ野菜を求めて遠くからクルマで買いに来る人がたくさんいるんだな。これにはちょっとシンガポール愛が増してしまった。

水耕栽培の社会的ポテンシャル
野菜市場に併設された見学用の温室では、コンピュータ制御でミネラルが適量含まれる水が縦横無尽に循環し、レタスや謎の中華系野菜がワッサワッサ育っていた。
どう、この近未来感。カッコイイでしょ。
なお、全部の野菜が水耕栽培というわけじゃないっぽい。パイナップルとかもニョキニョキ育っていた。南国に暮らしていてもパイナップルの生え方は未だにギョッとするよね。
先進国の未来の農業のカタチを見た
Jessicaさんが高級住宅街のお嬢様学校でお嬢様してらっしゃる間、高校生の僕は岩手県の農業公社でドロと牛のウンコにまみれ、住み込みで働いていた。やっぱり農業ってのはたとえ法人化しても生き物相手の商売だけに、普通のサラリーマンのようには休暇を取りづらい。だから地方の若者に農業が倦厭されるフシがある。っていうか、そもそも農業が地方産業という固定概念が間違っている。
もし日本でも植物工場としてシステマティックに生産工程を落とし込めれば、まさに工場勤務のサラリーマンと同じように農業を営めることになる。
人口が大都市に密集している日本のような先進国も、こんなカッコイイ植物工場が営利企業として成り立ちやすいのではないか。
でもそういう視点でシンガポールの植物工場をもう一度見渡すと、日本には無い利点に気付く。
まず、この植物工場には空調設備が扇風機くらいしかない。常夏なので暖房施設が必要ないのだ。次に日照の問題。季節によって熱帯雨林の焼畑農業で大気汚染にみまわれるものの、ほぼ赤道直下の北緯1°に位置するシンガポールでは、1年を通じて太陽が真上からサンサンと照らしてくれる。
従って冬場は昼間でも薄暗い日本と違い、照明設備も必要ない。つまり電力コストは水を循環させるポンプくらいなものだ。
ここまで固定費を圧縮できるからこそ、シンガポール産の葉物は100円ちょいちょいの値段で売れるのだ。これなら中国産の輸入野菜とも価格で互角に戦える。この点において日本で同じ商売はとてもで難しい。
でも、工場勤務と変わらない労働環境に落とし込めれば、日本の農業は産業としてとてもポテンシャルがあると信じている。そのヒントが、ビジネスとして成立しているシンガポールの植物工場にあるのではないかと適当に考えました。めでたしめでたし(=^・・^=)